「宝彩有菜プログレスコース」付録 
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自分だけのオールディーズ
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昔を振り返ると懐かしいものです。昭和３０年代の町並みやなどを再現した映画も、流行っています。
その映画の中で、夕焼け空の下、駄菓子屋さんの前で遊んでいる子供たちのおさげや半ズボンの姿などをみると、自分が幼少のころの記憶が蘇ってくるからでしょうか、ほのぼのと心が癒されるような気がします。
映画の中で次々に出てくるそのころの町並み。散髪屋さんだとか、タバコ屋さんだとか、丸い赤い郵便ポスト。ビー球や、ラムネのビン、自転車でひっぱるリヤカーだとか、三輪トラックなども出てきます。ああ、そうだ、そんなものもあったなぁと、とても懐かしくなります。
また、家の中の映像になると、丸いちゃぶ台だとか、白黒のテレビだとか、あるいは、久しく見たこともない蚊帳だとか、映画の筋よりも、そっちの時代考証のしっかりされた大道具、小道具に心奪われたりします。
そして、昔のことをあれこれ思い出すとなんだか、とても寛いで「ああ、そうだね。遠い昔だね。長く生きてきたんだなぁ。いろいろあったけど」などという、自分の人生全体が見えてくるような、そんな大きな感傷、少し哀愁がありますけど、でも、とても大きな感謝があふれてくるような、「よく、ここまで生きてきたなぁ」というような、涙ぐむような胸が熱くなる感情が起こることもあります。
自分が自分であることは、自分の過去をしっかり自分の中に確認して、いつでもそのころのことを思い出せる、いつも、その記憶と一緒に居る、それらの思い出は何一つ失われていないと確信できることなのかもしれません。
逆に昨日までの記憶を、もし仮に、すべて失ってしまったとすると、どれほど、自分自身が不安に思えることでしょう。きっと、「自分が誰だか分からない」「とても不安でどうしていいのかわからない」というような感情になるのだろうと思います。
それほど、自分自身の記憶というのは、自分自身の心の安定に重要な働きがあるのだと思います。「私」というのは「私自身の記憶という土台の上に乗っているもの」と言ってもいいかもしれません。ですから、その土台がしっかりすると安定しますし、その土台が崩れたり無くなったりするととても不安になるわけです。そのような自分の土台を確かめたくて、オールディーズの映画やテレビや本を見ているのかもしれません。
さて、深い瞑想をすると、その瞑想の中で、自分の古い記憶を次々にとてもリアルに思い出すことができます。それはまるで自分だけのオールディーズの特別映画を鑑賞しているようなものです。それは懐かしさで、涙が出るほどです。驚くほどの記憶の量です。まるで、大型のビデオショップくらいもありそうです。
人間の脳はとても高性能で、かつ、大容量なのだなぁ、よくこんなことまでおぼえているなぁと、びっくりします。赤い郵便ポストに塗られたペンキが、下のほうでしずくように膨らんだまま固まっている部分を思い出したり、真鍮ドアの取っ手の剥げた部分を思い出したり、ディーテールもとてもリアルです。
やがて、自分の記憶の探索は、そのころの食卓の様子などから、友達と遊んだ公園の様子など、どんどん広がっていきます。
そして、そのように自分の過去を自在に探索できるようになってくると、「自分とはいったい何者なのか」というような不安はいつのまにか消えて、「ああ、自分はここに居る」という大きな安心感に寛げます。
古い写真をみたり、おさなともだちと会ったりして、時には自分の過去を確かめてみましょう。そして、瞑想して、自分だけのスペシャルなオールディーズの映画を鑑賞してみましょう。きっと、人生が、もっともっと、潤いのある、抱きしめたくなるような愛おしいものになると思います。
宝彩有菜
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